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もう何年も前、とある映画の仕事で監督や主演俳優と一緒に大阪へ。映画の宣伝の一環で、学生達とディスカッションするため大阪芸術大学まで行き、控え室の学長室へ通された。時間を持て余していると、学長のデスクの書棚に懐かしい一本のビデオを見つけた。大森一樹監督作、吉川晃司主演「テイクイットイージー」。ぼくが小学生の頃、吉川晃司は突然現れたテレビの中のいちばんカッコいいアイドルだった。当時ほかにチェッカーズや光GENJIもいたけど、ダントツで吉川晃司。おしゃれの目覚めもそこから。親父のポマードで髪をサイドバックに撫でてみたり、マオカラーシャツや白いチノパンにサスペンダーとか、吉川晃司風(要は80s)な服を駅前の丸井に探しに行った。でも小学生のチビにはどれもブカブカだった。そんな超大物アイドル、吉川晃司主演の「すかんぴんウォーク」「ユーガッタチャンス」に続く「テイクイットイージー」は大森三部作最後の作品。この頃はもう中学だったと思う。それから数年経ち、高校を卒業するとアルバイトしながら吉川晃司が映画で乗ってたのと同じバイクを買った。60年代のBMW・R27という250cc単気筒のバイクに、スタイプ・LS200型のサイドカー。映画と同じコンビネーションにしてもらう為に納車まで半年待った。それから、その60年代の旧車のサイドカーに跨って北海道に旅に出た。映画の中の吉川晃司がそうしたからだ。でも現実は映画と違ってめちゃくちゃ大変だし、只々辛かった。なんせ非力で山越えるのもひと苦労。6ボルトのバッテリーは街灯もない北海道の原野を夜通し走り通せない。壊れる。でも、なんとか意地で半年くらい北海道中を走り回った。野宿もいっぱいしたし、ラーメン屋でバイトもしたし、農場にも泊めてもらった。いろんな出会いもあった。まさに十代最後の冒険だった。そんなぼくの中にしかないであろう思い出の映画と、何故か約二十年越しに大阪の大学の一室で再会した。仕事も忘れ衝動的にカセットテープをテレビデオに突っ込んでしまった。一緒にいた監督、俳優一同も何故か「テイクイットイージー」を鑑賞する。そこへ、やぁどーもと学長が現れた。その学長こそがまさにこの映画の監督、大森一樹氏そのひとでしたという話。なんだかその時、ぼくの中の壮大なストーリーがひとつ完結した気がしました。#またいつか同じバイクを買い戻したいです#地元の車屋にいまも放置されたまま